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催眠術をかけたがる彼女・XG hypnotize震えて考察⑤

HYPNOTIZE 震えて考察シリーズ|第5回

初めての方はこちらへどうぞ→#セイレーンが誘う深淵で全てが始まる・XG hypnotize震えて考察①|JURIA、JURIN、CHISA、HINATAは誰なのか?

催眠術をかけたい本当の思い

You’ll be where I want you every night
君は毎晩私が望む場所にいます


You’ll be back to feed your appetite
食欲を満たすために戻ってきます


Swirling hypno disc illusion
渦巻き錯視催眠術


My command becomes your reason
私の命令は君の存在理由になります


In your consciousness
君が意識で


Now your mind is of no consequence
考えることはもう意味を持たなくなります


I betcha never seen a girl so confident
こんなに自信溢れる子見たことないでしょ?



彼女がかけたかった催眠術。
2人の切実さ、痛いほどの彼女の願いを感じる部分です。



​​《君が意識で考えることは、もう意味を持たなくなる》

歌詞序盤、彼が強い不安や恐怖から必死で逃げているという仮説があると、このフレーズの背景に見えてくるのは、重いうつやPTSD等の深い沼。彼の意識では止められない死への囚われ(希死念慮)。

彼女は、死の考えに蝕まれる彼を側でずっと
見ている。けれど、彼女は、死ぬなんて考えないで、と彼に言わない。
それで希死念慮が止まるなら、うつで人は死なない。余計、その考えの止まらない自分自身を責め彼が苦しむ。それを深く理解しているから。

彼女は、彼の考えと死を切り離したい。彼が人生を終わらせようと考えても、その考えが何の力も意味すら持たなければ、命を絶つ行動はできないはずだから。願いは、ただ、生きていてほしい。
だから彼女は、希死念慮が《意味を持たなくなる》ように、死への考えを無効化する催眠術をかける。

たまにする、おまじないではなくて。
重い病気で食べられず眠れず辛い思いをする愛しい存在に、お願い食べて眠ってと言わずに、奇跡的にでも少しでも食べてくれるように眠れるように、闘病生活の日々の中で祈るようにかけ続けたくなる催眠術です。

それは、湾曲した言い方になる。眠れない時には〝瞼がだんだん重くなるよー〟とか。眠れないことより瞼の方に意識をそらすために。
小さな子に明るく〝痛いの飛んでけーぴゅーん〟と、飛んでいく方に意識をスライドさせる、不安より愛が伝わるあの言い方のように。

〝死ぬこと考えても意味ないよー、この無敵の呪文で死ねないよ〟という優しいユーモアさえ、湾曲させ、意識させないよう分かりづらくして、あのフレーズを言う。

この狂気的フレーズ。
重すぎる現実を目の前にしながら、さも凄まじい効力の禍々しい呪文を唱えてみせる狂気的ユーモアで、完全に引き込みます。意識をスライドするどころか。
つまり、これ以上重くさせない、不安にさせないために。

直接的な言葉や正論ではなく、湾曲させ、意識をそらして分かりづらくして、かつ効力の凄そうな言い回しで効果倍増も狙う、彼女の理解や知識や配慮、切実な願いと愛を感じます。

冒頭《逃げられない》も、抗い逃げるほどに恐怖が増大してしまう心の仕組みへの深い理解を感じるセリフです。そしてそれは、私と今ここにいればいいんだよ、ということ。彼の現状を受け止める深い配慮がある。

それでも、彼が今にも死という逃げ道さえ選択しかねない時には、彼女の《逃げられない》は、人生終わらせて逃げることだけは絶対にさせない、という彼を絶対に生かすための、優しく切ない檻になる。


《君は毎晩、私が望む場所にいます》

彼女が、毎晩彼が居てほしいと願う場所はベッド。本当の願いは、彼がベッドで毎晩眠ること。彼は毎晩眠れない。
《意識を遠のかせる》は、麻酔のような眠りのこと。《一晩中/クリック音で目覚める》は、夜の睡眠のこと。願いは彼が眠ること。

(同アルバムはヒプノタイズを中心にリンクしている。4SEASONSの〝色々試しても眠れない〟は、ヒプノタイズの2人も色々試した末の催眠術ということを示唆)



《食欲を満たすために、君が戻ってきます》

本当の願いは、食欲が出て、食欲を満たすために食べるような元の彼に戻ること。心身の状態が元に戻ること。彼は食事も摂れていない。



《私の命令は、君の存在理由になります》

生きている意味がないと言うのなら、
私の催眠術の命令、それが君の生きる理由になるの。
私のために生きて。と。



《こんなに自信溢れる子見たことないでしょ?》

それに、君は絶対生きる。私のためになら君は生きる。私が君の命を守る、生かす、という自信。

2人のリアル

重いうつやPTSDは仮定ですが、重い病気や辛い状況で食事も睡眠も出来ず、心身共にボロボロな状態で、恐怖や不安は心身を壊す程の激しさ。人生を終わらせることを選択しかねない絶望の淵を彷徨う彼の現状を感じます。

そして、その彼の全てを受け止める覚悟をして、理解して、睡眠術みたいに心の奥深くから癒してあげたいと行動する彼女の姿も。

催眠術にかけたい本当の願いに、彼女の言葉や行動に、この彼女らしさ、個性、この彼女のリアリティが溢れています。
この彼女の心の内からしか出ない迫真性を、2人のリアルを感じます。
ギアを上げるみたいに、途中で突然渦巻き錯視を持ってくるところも、なりふり構わない必死さと、優しいユーモアが見えるよう。

彼は、自分のためにこんなにも必死になって催眠術をかける彼女を、彼女の愛を目の当たりにして、自分は何もかも諦めているのに、彼女は何一つ諦めていないんだと、涙が止まらなかったのでは。

そして、君は、なんて素晴らしい女性なんだ…と、涙をこぼしながら呟く。



Cut the compliments that’s just
お世辞はやめて、そんなの


Common sense
常識


彼女は、お世辞はやめて常識と、そっけなく返す。
涙を堪えるために。
まだ催眠術が終わっていない。


不安で心配で辛い状況でも、ユーモアを忘れず自信に溢れる彼女。
彼を守ると決めたから。安心感を与えたい。癒やしたいから。